新太雪
新太雪
諸家 谷口むつ
私が子供の頃やった。くわしい話はずっとあとに人から聞いたわけやわね。
十二月の十三日頃やったと思うけど、朝はちらちらちら雪が降っとたぐらいでね。
新太郎っていう馬喰が女衆とコズハラからこちらへ山越えして、商いに来ておったの。
牛をひいて江州の方から、新穂峠を越えてね。
商いすませて帰るころも、雪はちらちら降っとんたんやけども、奥に行ったら、だんだんひどい降りになって、どんどん積もってくるもんで、とても峠越えられんと思って、諸家へ戻ろうとしたけど、ひどい降りになってしまって、
小峠ていう所まで引きかえしたらね、もう動けんほど雪が積もってしまった。
そんでも新太さん、牛も女衆も連れとるで、何としても戻らないかんと思って、励ましあって必死に一寸きざみに下りたけど、雪は積もるばっかで、腰まで積もっとるし、空腹と疲れで、とうとう新太さんはたおれてしまったってな。
女衆三人は心細うなるし、日は暮れるしで、
「兄、死ぬなや、死んでくれなや」
てって元気づけたけど、とうとう息をひきとってしまったの。
女三人と牛は身を寄せ合って温めあって、夜明けを待ってね、諸家まで必死にたどり着いたの、
雪はようやく止んで晴れ上がっとたの。
村の人に知らせて、ほいで村総出で小峠に向かって、新太さんをひとまず、村へ運んで、使いの者を江州へ行かせたの。
といても、五尺も八尺もの積雪じゃから、行きも帰りも一日がかりやった。
村ではお通夜をして、迎えに来た人たちにひきわたしたの。
とにかく、ひどい雪やったの、後にも先にもない雪やった。
ほいでみんなは、
「師走の新穂へは行ってはならん」
って、よう言ったけど、ああいうおそがい事があるでって、言い伝えているのや。
そいで、その時の大雪を「新太雪」って言うの。
※ 「坂内の むかし語り」 より
坂内村は岐阜県揖斐郡坂内村
諸家は坂内村の諸家地区
新穂峠は坂内村と滋賀県に繋がる旧道の峠の名前
江州は今の滋賀県の事
先日に揖斐高原で雨に降られて諸家に下りて雨宿りをして新穂峠越えを断念しました
新穂峠越えは来年の目標です
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コメント
マサヒさん
こういう伝えがあるのですね、師走の新太雪と
いうのですね。
といえば・・・
昨年の31日、長野から京都に帰る時マサヒさん
から電話もらってすごい雪だと
そのとおり電車でかえればいいものを車で帰って
美濃~近江の大雪には参りました。
2年前も31日、美濃~近江は大雪でしたね、その時は
新幹線の中で徐行運転でした。
投稿: ken | 2011年11月27日 (日) 16時09分
kenさん
坂内村の昔話でしょうが諸家地区の人の語りです
そういえば去年でしたね
滋賀県が大雪で難儀されましたね
毎年年末に大雪がここ最近の美濃ですね
坂内は豪雪地帯です
今年はもうMTBでの峠越えは諦めました
美濃と近江や越前の峠は全て豪雪地帯で通行止めに入っています
投稿: マサヒ | 2011年11月27日 (日) 18時41分
口伝とはいえ、こういった話や呼び名が残っているということは、
実際にあった話なのでしょうかね。
坂内にしても春日村にしても、
冬には相当雪が降る山奥に集落があって、
あんな所で生活を営むのって、
昔は本当に命懸けだったろうなと思います。
投稿: Fumi | 2011年11月28日 (月) 07時05分
マサヒさん、おばんですぅ♪
久しぶりに土日は休みだったんですね。
ハイキングに自転車(^^)
新太雪って、何かと思ったらこういう
お話だったんですね。危ないところに
行かせないよう、戒めでしょうか(^^)
上の記事、久しぶりにマサヒさんの
危なっかしい面が出ましたね。
壁に耳あり、障子に目あり(笑)
投稿: YAMA | 2011年11月28日 (月) 19時53分
Fumiさん
この話は実際に会った事のように思えますね
地名も実際の地名だし・・・
師走の南越の山は雪が一気に積もる事が有るから注意するようにってことでしょうか
春日村の上の方は陸の孤島になったかもしれないですね
坂内のある部落は完全に陸の孤島になったでしょう
今は冬の夜這いが出来ないツマラナイ時代です(^-^o)
投稿: マサヒ | 2011年11月28日 (月) 20時02分
YAMAさん
久々に連休が取れました
今週末はダメです(;´Д`)
新太雪は坂内の昔話です
危ない時に危ない所に行かないって事でしょうね
YAMAさん 気を付けてくださいね(^-^o)
デブローディですか(^-^o)
ローディを抜くと追っかけてくるローディが多いので抜きたくなかったですがタイムを計っていたので(^-^o)
写真を撮影しようとも思いませんでした(^-^o)
上の記事 危ないかもしれませんね(^-^o)
投稿: マサヒ | 2011年11月28日 (月) 20時05分